今回はパナソニック株式会社を分析してみましょう。リーマンショックで大きな打撃を受け、エコポイント制度で立ち直ったのでしょうか。今年12月から付与されるエコポイントが大幅下落します。今後、パナソニックは失速するのでしょうか、V字回復を続けるのでしょうか。
企業力総合評価は、家電不況の2002年からやっと改善し132ポイントに上がったところに、リーマンショックに見舞われ、一気に90ポイントに下落しました。悪化成り行き倍率1年(60ポイントの破綻懸念まであと1年)が付いています。
営業効率(儲かるか)、資本効率(資本の利用度)は2009年赤信号領域に入りV字回復しましたが、2010年青信号領域へは戻りませんでした。
生産効率(人の利用度)、安全性(長期資金繰り)は2009年悪化して更に2010年悪化しています。
資産効率(資産の利用度)は、青信号領域です。
流動性(短期資金繰り)は2009年、改善させましたが、2010年反転して悪化しました。
営業効率の下位指標をみてみましょう。
R増分とは、2008年から2009年へのリーマンショックの増分です。純粋増分は、上から下りてくる増分を控除した利益率変化を示しています。リーマンショックで、売上総利益率は2.66%悪化し、販売費一般管理費は2.13%悪化したことが分ります。トヨタが、売上総利益率は8.04%悪化し、販売費一般管理費は2.85%悪化したのに比べると、パナソニック株式会社の方が、トヨタに比べ売上に対して製造部門のコストの弾力性が高いことがわかります。
自社のリーマンショック時の増分、純粋増分を出してみてください。変化への対応力がわかります。
2002年の家電不況からの改善は一気に113ポイントに戻しましたが、今回の改善は101ポイントです。これには、何か理由があるのでしょうか。
生産性の下位指標を見てみましょう。
1人当たり売上が2009年に続き、2010年急落しています。2010年に従業員数が92,336人増加しました。意外に思われた方も多いでしょう。2002年の家電不況時には26,000人解雇したのに対し、今回はその3.5倍超の増加です。
これは2009年12月に三洋電機株式会社とその子会社が子会社として加わったためです。
業績の悪い三洋電機が傘下に加わったことで、パナソニックは、今回は2002年の家電不況のV字回復のような勢いがなかったのでしょう。
パナソニックは、今後リーマンショックと、三洋電機の再建の2つの困難を克服しなければなりません。
SPLENDID21NEWS第45号でご紹介した株式会社三越伊勢丹ホールディングスも、業績の悪い株式会社三越の統合とリーマンショックが重なりました。
まとめ
外部環境の荒波の中、大手優良企業は経営統合を行い、巨大化し、競争力獲得していきます。
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